日時:2019/8/11(日)15:00-16:00
場所:名古屋大学文系総合館・311/312室
講演概要:技術の伝達において、熟達者と習得者の相互交流を介する社会的学習は重要な役割を担っています。人間は生活に必要な知識や技術を伝達してきただけでなく、特定の分野における専門技術を発展させてきました。専門技術の伝達においては、「何をするか」だけではなく「どのようにするか」という表現部分も含めた伝達も大切な側面の一部になります。今回の発表では、特にこの表現技術の伝達において、熟達者は習得者のためにどのように行動を変化させているのかということを調べた実験についてお話したいと思います。専門技術の対象は音楽の基本表現(音のスムーズさ、大きさ)です。熟達したピアニストを対象に実験を行い、生徒に教える意図で演奏してもらう条件と観客に披露する目的で演奏する条件で、それぞれの演奏を比較したところ、(1) 熟達者は音のスムーズさを教える時にゆっくり演奏する (2) 熟達者は音のスムーズさ・大きさともに、教える時には誇張して演奏するということがわかりました。現在は熟達者側の行動に着目していますが、将来的にはこのような行動変化がどのように習得者の学習に役立つか(認識、記憶、模倣など)についても研究したいと思っています。